ソフトウェアエンジニアが CIID の IDP コース(7週目)に参加して学んだことをゆるりと共有します。今週(4/14~4/18)は Biology と Design を融合させる手法を学ぶ週でした。実際に生物学の大学の教授に教えてもらえたので、個人的にはこの授業はとても面白かったです!
5, 6週目の記事もあるので良かったら読んでみてください。
Day 31: Why Biology?
早速ですが、Biology と Design を組み合わせたものを Biomimetic Design と言うらしいです。この日は、なぜ Biomimetic Design が必要なのかを教えてもらいました。生物学の教授が教えているので生物学へのバイアスが少し強いかなと思います。更に、概念的な話なので、少し内容の抽象度が高いです。その大まかな内容を共有しようと思います。
自然の知恵をかりる
最初に Biomimetic Design はテクノロジーでもバイオロジーでもなく、自然とデザインの「架け橋」であると教わりました。そして、Biomimetic Design の目的は、自然の観察からフィードバックループを作ることだと教わりました。そして、下記の動画を見せてもらいました。
上記の動画は、Namib Desert Beatle が水を取得する方法を応用して、人類の水不足に応用させている動画です。動画のように、自然を「知恵」として人間の生活に利用することが Biomimetic Design の重要な要素です。人間より単純に長く生存競争を勝ち抜いている自然の知恵に目を向けようというのが、Biomimetic Design の基本的な考え方です。
更に、目を向けるべきは自然の「機能性」と「持続性」だと教わりました。「機能性」はそのまま「機能」のことで、「持続性」は「ループ」のことです。自然の「持続性」は、必ず単発で終わることはなく、基本的にループして繰り返し起こること意味しています。つまり、長い進化の過程で淘汰された自然の「機能性」と「持続性」を、人間の現実世界に応用させたデザインが Biomimetic Design です。
先週までの Life Centered Design で、「 nature as media」の考え方を学びました。この授業の後では、その考え方の具体的な手法になっていると感じました。Biomimetic Design を通して、自然を媒体として扱い、それを人間の生活に応用しているのだ理解しました。
Day 32: Biomimicry Frameworks
この日は Biomimetic Design のフレームワークを教わりました。基本的には、2週目で勉強した IxD の「メタファー」が Biomimetic Design の「メンター」になるイメージです。メンターを見つけた後は、基本的なプロトタイピングと同じ流れになります。なので、この章では Biomimetic Design のフレームワークの「Explore」と「Perception」を深掘って説明しようと思います。
Explore
この「Explore」は3つのフェーズによって成り立っています。それが、「Dissect」と「Understanding」と「Well-adapted」です。それぞれを説明して行きますが、「Explore」の目的としては「見つけるメンターを明確にする」ということです。
まずは「Dissect」から説明します。このフェーズでは、自分のデザインで「何を作りたいのか?」ではなく、「何がしたいのか?」を明確にします。それが、デザインにおける「Function」になります。 この Function は、名詞ではなく動詞です。例えば、自分がデザインしたいのは「水筒」ではなく、「保存すること」のように、このフェーズでは動詞に着目します。そして、デザインの目的を明確にすることで、求める動詞に近づけることが出来ます。例えば、自分のデザインの目的が「どこでも冷たい水が飲めること」なら、「保存すること」ではなくて、「保温すること」と動詞がかわります。このようにして自分のデザインの動詞を明確にしていきます。
次に「Understanding」では、「Context 」を明確にしていきます。Context は「Dissect」で見つけた動詞に制限を加えていきます。この Context と Function を組みわせると、IxD の HMW(How Might We?)の問いのようになります。この際に、Context は単に形容詞だけではなく、具体的にすることを意識します。「誰が」や「何を」などのように、主語や目的語を Context として追加して自分のデザインをより具体的にしていきます。毎週のことですが、具体的になりすぎるのはよくありません。具体的すぎる Context は、後のブレインストーミングで全くアイディアが出てきません。
最後に「Well-adapted」では 、「Life Principle」 と組み合わせます。「Life Preiciple」とは「自然の中における生物の原則」のようなもので、6つのフェーズがあります。下記に概要の画像を示します。
自分のデザインが、この原則のどのフェーズなのかを照らし合わせて、フェーズを選びます。そして、そのフェーズが満たすべきリスト(画像の番号付きリスト)を見ながら、 Function と Context の表現を微調整していきます。
Perception
この段階では、IxD の「メタファー」を自然の中から探し出します。「メタファー」と「メンター」の違いとしては、「メタファー」より「メンター」の方がより詳細で機能がはっきりしていることです。包含関係で表すと、「メンター」は「メタファー」の一部であるイメージです。
まずはメンターの候補を探し出します。その際に下記の AskNature というサイトを紹介されました。これは、Function(動詞)で検索すると、それに関連する生物の説明が出てきます。 この中からサクッとメンター候補を探します。
僕たちは、オンラインクラスかつ時間が3日間と短かったので、メンター探しはググって終わりました。しかし、本来はこの後に実際にメンター候補を観察します。観察により、メンターから Function とContext を学びます。その際に、メンターを五感を使って観察するのが良いと教わりました。「見る」と「聞く」では感じることは全く違し、「聞く」と「描く」でも感じることは全く違います。人間は「見る」感覚が強いので、違う五感を使って観察すると良いと教わりました。観察する時に気をつけることは、環境も積極的に変えることらしいです。「歩く」「自転車にのる」「走る」などの手段や、「晴れ」「雨」などの天候を変えることでより多くのことをメンターから学べるらしいです。(次回は本当に観察をやってみたい)
最後に、「Deep principle」を作ります。まずは、メンターの論文を下記のサイトを使って見つけます。次に論文からキーワードを抜き取ります。そして、キーワードを使って、メンターの機能を短い文章にします。これが、「Deep principle」です。この「Deep principle 」は後でデザインのインタラクションを考える時のアナロジーになります。この「Deep principle 」を用意しておくと、後で「自分のデザインがどうあるべきか?」の議論になった時に、立ち返れるようになります。
Day 33: Find out our mentor
この日は課題が渡されて、Biomimetic Design を実践する日でした。課題は「人間の成長をデザインする」と「生物の死をデザインする」の2つ出されて、各チームが選択する方式でした。僕たちのチームは、「人間の成長をデザインする」を選択しました。Biomimetic Design に馴染みがないと思うので、僕たちのチームの軌跡を画像と一緒に共有しようと思います。
Narrow down with your mentor
最初に課題の選択時にブレインストーミングをしていたら、「蛇の脱皮って一種の死であるけど、成長でもあるよね」って話題になりました。この一言で、課題は「人間の成長をデザインする」を選択しましたが、チーム内の解釈としては「死の後の成長」という風にしていました。そして、「蛇」をメンターにしました。本来は先に Function を探すべきだと思いますが、メンターが先に見つかった状態になりました。これは結果論ですが、先にメンターを見つけることでこの後の議論が具体的になりました。僕的には、これは結果的に良かったと思っています。こういう議論の抽象度が高い時は、何かを決め打って議論を前進させるべきだと思っています。一番良くないのは、議論が停滞してしまうことだと思います。
次に Function と Context のブレインストーミングをしました。蛇の脱皮から連想される Fucntion を抜き出して、それを適用できそうな Context を選びました。下記の画像の段階で、先生たちからフィードバックをもらい、Function と Context をより具体的にするように言われました。たしかに、この段階では Function が「再生する」で Context が「教育」になっていたので、抽象度が高いなと感じていました。
フィードバックの後、Context を具体的にするために、「何を」のブレインストーミングを行いました。ここで「新たに自分の殻を破る」という意味で、単なる「教育」から「絵を描くこと」に集中することにしました。この決定の背景には、「絵を描くこと」は子供の頃は進んで行っていたが、大人になると多くの人にとって億劫なものになるという議論がありました。この Context のおかげで、次に行う Function のブレインストーミングがかなりやりやすくなりました。先生からのフィードバックで、メンターの再考も促されましたが、議論を先に進めるために、「蛇」のまま進むことにしました。必要に応じて、後で変えようと議論していました。
更に、Function の精度を上げるために、「What do you want your design to do?(デザインの目的)」の問いをチームでブレインストーミングしました。昨日習った「何を作りたいのか?」ではなく、「何がしたいのか?」を理解するために行っています。それで、僕たちのチームは「絵の上達を後押しする」に決めました。この目的をもとに、Function を「再生する」から「成長を選択する(Optimize Growth)」に変更しました。前のフェーズでも少し触れましたが、Context が具体的になったことがとても役立ちました。Context が具体的になると目的が具体的になり、結果的に Function の詳細度を上げてくれたと思います。
その後、適当にググって見つけてきた蛇の脱皮の解説文から、Deep principle のブレインストーミングを行いました。Deep principle では、新しい皮の生成時期と脱皮のしかたを中心に短い文章に落とし込んでいきました。最終的に「新しい皮は蛇が現在の皮がきついと感じたら、現在の皮の下で生成が始まる。表面がザラザラした固い物体を使って古い皮を剥がす。脱皮は不要なものを取り除くこととさらなる成長のために行われる。」が僕たちのチームの Deep principle になりました。この Deep principle は生物の専門家でなくてデザイナーが読んで分かるぐらいまで専門用語を取り除く必要があります。後述しますが、この Deep principle はインタラクションを考える際にとても強力でした。話が発散せず、Deep principle に沿ってインタラクションを磨き込むことが出来ました。ただ、本当はこの段階でもう一度メンターの議論があっても良かったと思います。僕たちのチームは最初から最後まで「蛇」で進んでいました。なので、メンターをもっと探す時間があったら、もっと面白いインタラクションを思いついたかもしれません。
最終形を下記に示します。画像にはありませんが、僕たちのチームは Life Principle として「Adapt to Changing Condition」を選択しています。Life Principle はそんなに議論がなくて、僕たちの Function である Optimize と Adapt が同義語なので、それが理由でAdapt to Changing Condition」を選択しました。良くも悪くも、最初から最後まで「蛇の脱皮」を中心に議論できたので、議論がそんなに発散せずに進めたと思っています。メンターの役割としては、このように抽象度の高い議論を具体的に落とし込んでいくことなのかなと思っています。そういう意味で言うと、今回のメンターはかなり役割を果たしてくれたと思います。
Day 34: Understand mentor
この日は翌日の発表に向けて自分たちの Deep principle からプロトタイプを作る日でした。主に自分たちのメンターから、どうプロトタイプのインタラクションを落とし込んで行くのかを議論し、それを形にしていきました。その際に議論したことを共有しようと思います。
助けて!メンター!
まずは、コンセプトのブレインストーミングを行いました。先週と同様に絵に描き表し、10分間で出せるだけ出して、その後にそれぞれアイディアについてディスカッションを行いました。その結果、僕たちのチームは「公共スペースの掲示板」という考えをベースにしてプロトタイプを作っていくことにしました。
この後に、どういうインタラクションが必要か議論になりました。しかし、焦点の定まらない発散気味の議論になっていました。なので、もっと蛇の成長のループを正しく理解することにしました。そのために、Deep principle をもとに蛇の成長を図解してみました。下記の画像がその図解と対応関係です。
これをもとに、このループに忠実になるように最初のプロトタイプを作ることを決めました。この作業は、チームの共通認識を作るのと同時に、MVP が何であるかを明確にしてくれました。このおかげで、余分な要素を省くことが出来ました。最初「掲示板」というアイディアが決まった時は、「レベルアップ」のような概念があり、僕は釈然としていませんでした。しかし、この蛇の成長ループにフォーカスすることで「レベルアップ」の要素を取り除き、プロトタイプをシンプルに出来ました。更に、「フィードバックを最大化する」という観点から、全てをデジタルにするのはやめました。具体的には、「公共の場で一緒に絵を描くことも、見たり聞いたり出来てフィードバックになるよね」という議論から、オフラインのコミュニティーの要素を残しました。
このように、メンターは余分なインタラクションを省くだけでなく、フォーカスするインタラクションを明確にしてくれました。困った時にメンターに立ち返ると議論の方向性を修正してくれるのだなと感じました。
Day 35: Presentation
この日は今週のプロジェクトの発表の日でした。僕たちは「Snaketch」というコンセプトを考えました。プロトタイプは結局時間がなくてストーリーボードだけになってしまいましたが、面白いものが出来たと思っています。今週は発表資料を下記に載せておきます。(スライドとイラストは僕が作りました!)
Biomimetic Design は個人的にすごい面白かったです。新たな観点でものづくりを考えられたし、チームの合意形成も取りやすかったなと思います。
もっと、時間があったら、より蛇のメンターをもとに色々な機能を考えられたなと思います。先生やクラスメートからのフィードバックで、「古い皮はどうなるのか?」というフィードバックがありました。チーム内でも「蛇の古い皮」に対する議論はあって、「自然の中に残されて誰かの栄養になる」や「自分の成長の証跡になる」という議論をしていました。しかし、時間がなく自分の成長のループに集中することにしました。もう少し時間があったら、この古い皮がどういう機能をはたすのかを考えることができたと思います。そして、もっと面白くなりそうだなと思います。
9週目の記事もあるので良かったら読んでみてください。(8週目はスキルウィークで記事書いてません)